症例紹介

Case report

【症例1】

ラブラドールレトリバー 雄 6歳齢 30kg

主訴
約2年前からの両後肢跛行を主訴に当院来院。

検査所見
歩様検査において、両後肢の間欠的な不完全負重が認められ、特に左後肢で顕著であった。鎮静下において、整形外科学的検査およびX線検査を実施した。左膝関節における伸展位および屈曲位のCranial Drawer Test(CDT)はともに陽性であり、Tibial Compression Test(TCT)も陽性であった。右膝関節においては、屈曲位のCDTは陽性であったが、伸展位では陰性であり、TCTも陰性であった。X線検査においては、左膝関節の関節液の増量と骨増殖体の形成が顕著であり、左脛骨の前方変位が認められた。右膝関節においても軽度な骨関節炎所見が認められた。また、X線フィルムより測定した術前の脛骨高平部水平角(TPA)は、左膝が24°、右膝が25°であった。

仮診断
左前十字靱帯完全断裂、右前十字靱帯部分断裂

治療
両膝関節に対する関節鏡検査を実施した。左膝関節においては、前十字靱帯の完全断裂、内側半月板の損傷、重度滑膜炎、遊離した関節鼠が認められた。右膝関節においては、前十字靱帯の部分断裂、軽度滑膜炎が認められた。
重症度の高い左膝関節に対する脛骨高平部水平骨切術(TPLO)を実施し、1週間後、前十字靱帯の完全断裂の予防および骨関節炎の進行防止を目的として右膝関節に対する同手術を実施した。術後のTPAは左が12°、右が6°であった。

治療経過
術後早期より患肢にて負重可能であり、骨切部の癒合状態を定期的に評価しながら、術後2ヵ月半でTPLOプレートの除去を行った。現在、術後6ヵ月経過しているが、患者の歩様状態は良好である。


左:術前のX線写真(側面像)、右:術後のX線写真


左:術前のX線写真(側面像)
右:術後のX線写真

【症例2】

ヨークシャーテリア 避妊雌 9歳齢 4.0kg

主訴
左側前十字靱帯断裂の疑いのため、関節鏡検査および治療を希望し他院より紹介。

既往歴
一年半前に、右後肢跛行のため、同院より当院を紹介され、関節鏡検査の結果、前十字靱帯の完全断裂および内側半月板損傷と診断。関節鏡下にて半月板の部分切除および関節外制動術であるLateral suture法を実施。

検査所見
歩様検査において、左後肢の支柱肢跛行が認められ、起立位では完全に挙上していた。整形外科学的検査では、左膝関節における伸展位および屈曲位のCranial Drawer Test(CDT)はともに陽性であり、Tibial Compression Test(TCT)も陽性であった。X線検査においては、左膝関節の関節液の増量、左脛骨の前方変位が認められた。X線フィルムより測定した術前の脛骨高平部水平角(TPA)は、左膝が26°、右膝が31°であった。また、左膝蓋骨の内方脱臼も認められた.(G2)。


術前のX線写真(側面像)


術前のX線写真(側面像)


術前の歩行動画

仮診断
左前十字靱帯完全断裂の疑い

治療
左膝関節の関節鏡検査の結果、前十字靱帯の完全断裂、内側半月板の損傷および重度滑膜炎が認められた。
関節鏡下にて、損傷した内側半月板の部分切除、関節内の炎症滑膜の焼烙処置を実施後、左膝関節に対する脛骨高平部水平骨切術(TPLO)を実施した。また、併せて膝蓋骨内方脱臼整復術も行った。


術後のX線写真(側面像)


術後のX線写真(側面像)


術後の歩行動画

治療経過
以前に手術した右後肢に比較して、術後早期より患肢の負重状態が改善した。現在、術後6ヵ月の段階で左後肢の大腿筋肉量の増大が認められ、術後経過は非常に良好である。

【症例3】

トイプードル 雄 9ヵ月齢 2.8kg

主訴
2ヵ月前からの間欠的な右後肢跛行と前日からの突然の右後肢挙上

検査所見
歩様検査において、間欠的に接地させるような仕草もあるが、右後肢の挙上が顕著に認められた。触診において、右大腿筋量の萎縮が顕著であり、右股関節伸展時における疼痛も明らかであった。X線検査では、右大腿骨頭の変形および骨頭成長板の骨折が確認された。

仮診断
レッグカルベペルテス病に伴う右大腿骨頭成長板の骨折


術前のX線写真


術前のX線写真


術前の歩行動画

治療
レッグカルベペルテス病は保存療法に反応が乏しく、一般的には大腿骨頭・骨頚切除術(FHO)による救済的外科手術が行われている。FHO実施後は、疼痛からは解放されるが、偽関節が形成されるまでには長期間が必要であり、また、その術後の機能回復率も60-70%と言われている。飼い主様の関節温存への希望も強く、術後の機能回復率が90%以上と言われている人工関節全置換術(BioMedtrix社 Micro THRシステム)を本患者には実施した。また、THR実施時には、関節鏡検査による股関節内の評価も併せて実施した。

予後
術後は2週間の安静管理が必要だが、術後2日目より患肢を使用し始め、術後2週目にはたまに跛行は認められるが、ほとんど跛行なく四肢にて歩行出来るようになった。まだ、小型犬のTHRに対する長期的な予後は不詳だが、現時点でのインプラントの異常は一切認められない。


術後のX線写真


術後のX線写真


術後2週の歩行動画

【症例4】

ミニチュアダックスフンド 避妊雌 5歳齢 6.7kg

主訴
昨日よりあまり動きたがらなくなり、来院時の朝より起立不能となり、他院より紹介。

検査所見
神経学的検査にて、両後肢の意識的固有位置感覚(CP)を含む姿勢反応は全て消失しており、隋意運動も認められず、対麻痺を呈していた。排尿は昨日の夕方に確認されたのが最後で、以来していないとのことで、膀胱は蓄尿状態であった。後肢の浅部痛覚は認められなかったが、深部痛覚は認められた。

MRI検査所見
T12-13椎間で左腹側から中等度から重度の脊髄圧迫病変を認め、圧迫物質は頭側へ変位し、T12椎体上に広く拡がっていた。圧迫物質はT2、T1強調画像で共に低信号を呈し、T12-13の椎間板と連続性が見られ、髄核の脱出が疑われた。


T2強調画像・矢状断像

T2強調画像・横断像

診断
T12-13椎間における椎間板ヘルニア(Grade4)

手術
T12-13における片側椎弓切除術を施術。T12-13椎間頭側部の硬膜外腔より逸脱した椎間板物質を摘出。

治療経過
術後翌日より、起立し、自力での排尿が可能となった。術後3日目にはふらつきながらも歩行可能となった。術後1週間で元気に退院し、術後2週間ではかなり安定した歩行が可能となった。現在、術後1ヵ月の段階で、両後肢のCPはほぼ正常まで回復し、術後の経過は非常に順調である。

【術後3日後の動画】

術後翌日には起立可能となり3日目にはふらつきながらも歩行可能

【術後2週間の動画】

左後肢にやや遅れがあるが右後肢の麻痺はほぼ改善

  • 本症例は発症から検査・治療までの経過が非常に早く、術後の経過も非常に良好であった症例です。
    術前の症状によって、回復期間や回復の程度には個体差があり、脊髄の損傷の程度に依存するといわれています。

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